BPD者の操作性、操作的言動に気づいて、
BPDに気が付いたら、そこからどうしたら良いのか。
ここではその話をしたい。
まずそれを認識することで心理的距離を取ること。
気づくだけでも距離は取れるけれど、
距離を取るのと突き放す、毛嫌いするのは違う。
関係を断つ、という選択肢もあるかもしれないけれど、そうもいかないことの方が多いだろう。
つまり、程よい距離を取らなくてはいけない。
程よい距離を取ることで、BPD者の操作性や衝動性に対して、周囲の人の耐性を上げること。
すなわち「ボーダーラインシフト」(by市橋)
これにつきる。
ボーダーラインシフト
改めて「ボーダーラインシフト」について調べてみると、
驚いたことに成書としてはまとまっていないらしい。
ボーダーラインシフト:Wikipedia
https://x.gd/H8tKt
市橋先生が1980年代末にまとめたもの、
これが「ボーダーラインシフト」として今に伝わる元である。
文献としては「市橋秀夫:境界人格障害の初期治療.精神科治療学 6(7); 789-800, 1991」
約30年前の文献ではあるが、今もその内容は古びていない。
ボーダーラインシフト
・なにかしてあげてはならない。
・医師の指示以外のことを行ってはならない。
・話を聞いてあげてもよいが、患者に入れあげない。
・他のスタッフに対する批判を真に受けない。患者の話を真に受けない。自分に対する陰性感情は「症状」の1つと割り切ること。
・起こしたことの責任を患者自身に引き受けさせること。
・大丈夫と言ってあげること。
・互いに情報を綿密に交換する。
・自殺企図などの深刻な行動化が起こっても、過剰反応しない。たじろがない。
・患者の冗談やユーモアの才能を引き出すこと。
・待つこと、我慢させることが治療の力になる。
「生暖かく」見守る
「みんなでボーダーラインシフト」で程よい心理的距離を取りながら、
「生暖かく」見守り、関わり続けること。
そうしてゆっくり「だらだらと慣れていく」ように関わり続けることで、
本人が対人関係の距離の取り方に習熟していくこと。
それが治療的であり、周囲の人が支援者であり続けられるように身を守ることがBPDの対応には最も重要なことである。
そう私は理解しています。
つまり、ここにあるのと同じ対応に収束していく。
「打たれ弱過ぎる若者をなんとかしたい!さとり世代のメンタル不調への対処法」
https://sangyoui-navi.jp/blog/55
打たれ弱過ぎる若者をなんとかしたい!さとり世代のメンタル不調への対処法さとり世代のメンタリティは上の世代とどう違うのか。彼らのメンタル不調にはどのような対応が有効なのか。産業医の立場から、職場sangyoui-navi.jp
BPDについての成書
あらためて今の時点でボーダーラインについての成書を探してみると、
そのほとんどが2000年代の出版で、
それ以降はBPDはパーソナリティ障害についての本の一部となっているみたい。
やはりBPDのブームというものはこの辺りで終わったということなのだろう
これは世界的な流れだったのかもしれないと感じる。
私がかつて出会った本で、今でも良い本だったと思うのは、
「境界性パーソナリティ障害=BPD 第2版」
– 2010/12/27
ランディ・クリーガー (著), ポール・メイソン (著), 荒井 秀樹 (翻訳)
https://amzn.asia/d/4EIinyw
3,080円(2024年09月21日 00:32時点 詳しくはこちら)
この本で一番勉強になったなと思うのは「ノンボーダー」という言葉。
BPD者の相手、周りの人という意味だが、
BPD者がBPDとなるには相手の人、ノンボーダーが必要だと。
そのノンボーダーの対応によってBPD者は状態が変わり、治りもする。
この「ノンボーダー」は個人の構え方の話だが、
「ボーダーラインシフト」はチームとしてBPD者にどう関わるのかの話。
そんな切り取り方、アプローチの違いがとても印象に残っている。
本としては、いかにも翻訳らしい本。
読みにくいと感じる人も少なくないと思う。
まあ「ボーダー」という捉え方も西洋医学的なとらえ方ではあるし、
返ってこんな訳書の方がわかりやすいように感じたりもする。
そして、自身がノンボーダーになりやすい属性を持つ人、
そんな人もいるわけで、その話はまた別に。